温かい縁側で寝転がっている俺は、柔らかな日差しに目を細めた。

重く伸し掛かって来る睡魔に、自然と瞼が閉じる。

無理にこじ開けようと試みるが、どうやら無駄みたいだ。

風が木々の葉を揺らす音と、小鳥の囀りが遠くなる。


ああ…平和だな。


意識を手放そうと身体から力を抜いていった。

そしてもう少しで途切れると言う時、遠くから足音が近付いて来る。

面倒で、俺はわざわざ目を開けると言う事を放棄した。

誰でも良いから、兎に角俺を起こすのだけは止めてくれ。

意地でも目は開けてやらない。


「………孫市殿」


足音がぴたりと止まって、控え目に名を呼ばれる。

それは良く聞き慣れた、愛しい声だった。

それでも今は、ただ眠たくて。

これが現実なのか、夢なのか分からない。


いや、どちらでも構わない…かな。


すとん、と。
俺の傍らに腰を下ろした気配。

それから、髪に触れる手の温もり。


ああ、夢じゃ無いんだなぁ。


思わず緩みそうになる口元を引き締める。

また、小鳥の囀りが近くなった。

ふわふわと髪を撫でられるのが心地良い。


「…お疲れの様…ですね」

優しい声が耳に心地良い。

再び瞼の裏が乾く感覚がして。
また、眠気が深まった気がする。

幸村は暫く俺の髪を梳いていたが、やがてその手が頬へ触れてきた。

幸村にしては積極的だな。

顔が見たいが、もう少しだけこうされていたいので我慢。

きっと真っ赤な顔をしているんだろう。

普段は抱き締めただけで耳まで赤くする幸村だから。

俺はさり気なく寝返りを打った。


「あ、…」


幸村が小さく声を上げる。
息を詰めた様だが、俺が目を開けないままでいると、静かに息を吐く音がした。

「良かった…」

起こしてしまったかと思った、と。
幸村は呟く。

実際、初めから眠ってなんか居なかったが。

少し罪悪感が芽生えるが、気付かない幸村も悪い。
…と言う事にしておいてくれ。

横向きに身体を横たえた俺の視界が暗くなる。
それは薄い瞼越しに分かった。

多分幸村が、影を作ったのだ。

ぼんやりとそんな事を考えていれば、唇に柔らかい感触を受ける。

さらりと、幸村の髪が頬をくすぐった。


俺はどうやら寝込みを襲われているらしい。

まさか、幸村からこんな事をしてくるとは。

流石に眠気の覚めた俺は、そっと目を開ける。

目の前には、伏せられた幸村の瞼。
長い睫毛が可愛らしい。

見詰めていると、やがて幸村の瞳が俺のそれと視線を交えた。

「ま、…孫市殿ッ…!」

幸村は大層慌てた様子で俺の上から退いてしまう。
耳まで赤く染め上げ、物言いたげに口をぱくぱくと動かした。

が、結局何も言えないのか、俺の前に正座して座る。

「こ、これは…その…」

何も言わないでいると、幸村はしどろもどろになりながらも言い訳を探した。

可愛くて、愛しくて、俺は笑う。

「膝を貸してくれないか?」

「え、…?」

唐突な言葉にぽかんと口を開けた幸村の膝上に、俺はさっさと頭を乗せた。

「あ、孫市殿…!」

幸村は慌てるが、俺を退かそうとはしない。
俺は幸村の頬に手を伸ばす。

触れた指先から、普段以上に温かい体温が感じられた。

笑めば、幸村は困った様にはにかんだ。

そうしたら、俺の鼓動は速くなって。
そこが痛いぐらいに、愛しかった。

「…幸村、もう一度」

言えば、幸村は顔を背けてしまう。
風にそよぐ髪から、良い香りがした。

「もう一度してくれよ」

再び言えば、きつく目を瞑った幸村の顔がゆっくりと近付いて来る。

薄く開いた唇を待ち切れずに、俺は幸村の後頭部に腕を回して引き寄せた。

「ッ!?」

驚きで見開かれた瞳に僅かに笑って、唇を押し付ける。

「ぅ、ン…!」

苦しげな幸村の顔を覗けば、目尻にうっすら涙が浮かんでいた。

恥ずかしいのだろう。

いつまでも初い反応が本当に可愛らしい。

ゆっくり口付けていれば、ああ…また眠くなって来た。

「…幸村、」

「は、…はい」

戸惑いがちに返事を返してくれる幸村に、俺は笑んで髪を梳く。

幸村の膝上は温かくて心地良い。

「少し眠らせてくれないか」

目を閉じれば、俺の額に触れて来た唇に肯定される。

乾く瞼の裏側。
再び睡魔が俺の身体を重くした。

遠くなって行く小鳥の囀り。

だが、幸村がぽつりぽつりと歌ってくれた子守歌は、いつまでも消えなかった。

世の女性達には申し訳無いが、俺は相当幸村の事が好きらしい。

幸村も同じ着持ちでいてくれたら、それ以上幸せな事は無いと思う。


乱世の合間の昼寝日和。


このゆっくりと流れる時間を、大切に過ごしたいと願う俺だった。


終わり。



VistA の杏仁ハル子様からキリバン小説として頂きましたー!!!!
有り難う御座います有り難う御座います…!
も、もう!ベタ惚れZOKONな孫市が堪らないんですがあがががっ!
キリ踏んだ自分偉いっ!(…)
素敵な佐幸とか慶幸とかダテサナを書かれるので皆さんこぞって行かれると良いですよ!
杏仁様、本当に有り難う御座いました〜vV
2006/3/10.